2013年3月25日月曜日

Jim O'rourke カバーワークス その6

2003年に反戦、アンチブッシュのキャンペーンに賛同するミュージシャンの楽曲がフリーダウンロードできるサイトの中で発表されたのがBill Fayのカバー「Pictures of Adolf Again」です。
bill fayは70年代に活動していたフォークシンガーでごく最近、wilcoのjeff twedyによる再評価もあり新アルバムを41年ぶりに発表しています。
ジム・オルークが全幅の信頼を寄せているglenn kotcheをドラムにその他の楽器はおそらく全て自分で演奏して完成させています。原曲の素朴なアレンジとは打って変わってジムお得意のかなり熱い70年代アメリカンロック風ナンバーに仕上げています。

Jim O’Rourke & Glenn Kotche - ”Pictures of Adolf Again” 
http://www.dailymotion.com/video/x4m4cd_jim-o-rourke-pictures-of-adolf-agai_music#.UVBcwhwj3oI

また、若松孝二監督作「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」のクライマックスシーンに合わせた尺での別バージョン(ギターソロが長尺となっている)が使われています。また、同映画のサウンドトラックには一番初めに発表した時のアレンジに近い別バージョンが収録されています。
映画製作のためSteamroomの機材を全て売り払って日本へ居を移したジムさん。愛好する若松監督作品の音楽に携わりたい一心で日本語を習得し、第一案を渡すも却下され自宅の押し入れで演奏、録音してなんとか完成させたそうです。


2013年3月19日火曜日

Jim O'rourke カバーワークス その5

2000年発売日本独自企画のVelvet Undergroundカバー集「Rabid Chords 002: VU Tribute」。
海外勢は音響派とelephant6関係、The Olivia Tremor Control, Of Montreal , The Ladybug Transistor , The Music Tapes, Jim O'Rourke, John McEntire。
日本勢はズボンズ,ナカコー,COIL,シーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハーなど。
Jim O'rourkeは「Venus in Furs」をカバー。演奏参加メンバーはTim Barnes, Glenn Kotche, Julie Pomerleau。「Eureka」録音時に関わっている方たちです。ジム・オルークらしいギターによる重厚なドローン、サビで挟み込まれるビブラフォンによるフレーズが美しい。おそらくsteamroomでの録音なのでしょう。


2013年3月17日日曜日

Jim O'rourke カバーワークス その4

2007年発売「Guilt by Association」。大ヒットしたメジャーなポップソングをインディーのミュージシャン達がカバー。参加アーティストはSuperchunke,Mike Watt,Bonnie'Prince'Billyなど



このアルバムでジムさんはSpice Girlsの「Viva Forever」をNeil Young&Crazy Horse風にカバーしています。なんでもカラオケの十八番だったらしいです。これが彼の「Bad Timing」発表後に構想していた全曲カバー(有名だったり良い曲だけど酷いアレンジのポップソングを換骨奪胎する計画だったらしい)のアルバム「Novelty Act」に収録予定だった曲なのかどうか知りたいところです。
この幻のアルバムにはBruce Hornsby「That's just the way it is」やEaglesの「Lyin' Eyes」を収録する事は決まっていたみたいです。
この時期、ライブでもカバーを頻繁に行っていたようで来日時にはTracy Chapman「Fast Car」やKevin Ayers「May I」、Thunderclap Newman「Something In The Air」を披露していたようです。




そのほか面白いところではOASISの「Don't Look Back in Anger」をDevendra Banhartが彼の尊敬するCeatano Veloso風にカバーしています。


2013年3月16日土曜日

Jim O'rourke カバーワークス その3

99年発売の「DRIVE from 2000」というハルメンズ、パール兄弟のサエキけんぞうプロデュ―スのテクノポップ寄りのコンピにスパークスのカバーを提供しています。
こちらのブログで聴くことができます。かなりハイテンション!
たぶん普段のカラオケはこんなノリなんだろな(笑)

Sparksの「Propaganda」は音楽史上最高の部類に入る作品とジムさんは発言しています。
実際にLoose Furのセカンドアルバムではスパークス風の楽曲が披露されたりもしています。

Sparks - Thanks But No Thanks







2013年3月15日金曜日

Jim O'rourke カバーワークス その2

Jim O'rourkeがカバーした楽曲をここに記載。

・「楢山節考」寺内タケシとブルージーンズ



2002年発売「昭和レジデンス 赤盤」の二曲目、クレイジーケンバンドに挟まれてジム・オルークによる「楢山節考」のカバーが収録されてます。このアルバム自体は幻の名盤解放同盟による企画で97年頃クレイジー・ケンバンドによるカバー曲を録音したままお蔵入りになっていたものに新録を加えて(何故かエンケンのニール・ヤング「ヘルプレス」カバーも収録)の発表となったようでライナーには廃盤墓場での”供養”と書いてある笑

ライナーにジムさんのショートインタビューが載ってるけど何故この曲を選んだのかは答えてなくて今村昌平の映画からなのか?それとも湯浅学さんが紹介したのか?謎である。

寺内タケシとブルージーンズのバージョンを元に手打ちのリズムにフニャフニャのシンセとギターが乗っかり突然壮大なラストを迎える。ゲゲゲの鬼太郎とか日本昔話のバックで流れそうな脱力カバー。これをSonic Youthのレコーディング中に夜中ひっそりスタジオでメンバーから借りた楽器でしこしこ作っていたらしく、その状況がなんとも切なく可笑しいです。
このカバーを聴くまでは山本精一さんが依然紹介していた深沢七郎による弾き語りのバージョン(*1)を参考にしてBad Timingのような雰囲気でカバーしているのかと思って凄く期待してました。いざ購入して聴いてみるとこれが正反対に振り切れていてさすが一筋縄ではいかない人だな(笑)と衝撃を受けた。

(*1)深沢七郎「ギター独奏集 祖母の昔語り」に「楢山節」を収録。今の耳で聴くとTakomaレーベルから出ている作品のようで緊張感ある雰囲気がとても良いです。







2013年3月12日火曜日

Jim O'rourke カバーワークス その1

ジムさんはいろいろな曲をカバーしていて名盤「eureka」では英国のハーモ二ウム弾き語りおじさんivor cutlerの楽曲「women of the world」を換骨奪胎して自分のものとしています。
また、正反対にバート・バカラックの「Something Big」は原曲のアレンジや録音をほぼ完コピしています笑
他にも様々なカバーがあるのでここに記載。

自分が初めてジムさんの音楽に触れたのは、2002年に発表されたはっぴいえんどの二枚組カバー集「Happyend Parade」です。ここでジムさんはオリジナル・ラヴとともにはっぴいえんどの「抱きしめたい」をカバーしています。田島貴男が大瀧 詠一そっくりに歌っているのが面白い。またブックレットでジムさんがリスナーとしてコチンムーンで細野さんを発見し、トロピカル三部作~ホソノハウス、最後にはっぴいえんどへと辿りついた事をまるでおとぎ話のようなストーリー仕立てで書いていて洒落てます。演奏はジムさんの他にドラムにTim Barnesが参加している。原曲に寄り添いつつもヴェルヴェッツのようなサイケ風味も加味したアレンジが素晴らしい。後半ビブラフォンとシェイカーでミニマルな展開にするのはお家芸といった感じか。ジムさんの自宅スタジオsteamroomでの録音がまた良い音。

細野さんとの関係で2007年に発表されたトリビュートアルバムではカヒミ・カリイをボーカルに「風来坊」のカバーを披露しています。ここではボサノバ的な演奏の上に細野さんに多大なる影響を与えた事を理解した上でVan Dyke Parksへのオマージュとしてスティール・パンと複雑かつ美しい弦が配されています。
スタジオ版では、後半やはりミニマルな展開となりシェイカーのリズムとスティール・パンがその上を転がっていき格好いいです。

蝉の鳴き声が良いなぁ。この時のライブに行けなかった事が悔やまれる。


また、カヒミ・カリイのアルバム「NUNKI」に演奏および楽曲提供(「He Shoots The Sun」「Night train」「Mirage」いずれも名曲!)で参加した関係で行われたライブでは「風来坊」の他にバカラックの「This Girl's In Love With You」を披露しています。これはカヒミ・カリイのカバーと呼んだ方がいいのかも。また、次のアルバム「It's Here」ではバカラックを思わせる静謐な名曲「I Come Here」をカヒミに提供しています。


また2010年に発表されたジム・オルークによるバート・バカラックのトリビュートアルバム『All Kinds of People ~love Burt Bacharach~ produced by Jim O'Rourke』では全アレンジと演奏に関わっていますが本人歌唱による「Trains And Boats And Planes」を披露しています。原曲にあるコテコテなサビを即興演奏的なピアノのフレーズに置き換えて現代的に仕上げています。ここでのテクニカルなドラムはglen kotcheによるものです。こういったドラムのフレーズはポストロック的に聴こえがちなのですがよくよく聴くとバカラックの「Monterey Peninsula」や「Reflections」等にみられる複雑なドラムフレーズが念頭にあるように思われます。
ビルボードでのトリビュートアルバムの発売記念コンサートではglen kotcheとゲストの坂田明とジムによって演奏がフリージャズ化して細野さんがドン引きしてその様子を見ていた(特にglen kotcheがハードコアに叩きまくっていた!)のを思い出します笑
この日のライヴではアルバムで小坂忠が歌っていた「Don't Make Me Over」をジムさんが熱くシャウトして歌っていました。







Jim O'rourke - Fall Breaks And Back To Winter (Spring Breaks And Back To Winter)

98年に日本独自で企画されたビーチ・ボーイズカバー集「Smiling Pets」。

参加面子が豪華でメルト・バナナやイトケン率いるHarpy、海外勢はやはり音響派の時代だったんだなぁという感じでジョン・マッケンタイアやデイヴィッド・グラプス、お馴染みサーストン・ムーア!他にはオリヴィア・トレマー・コントロールやアドヴェンチャーズ・イン・ステレオなどなど。

そんな中やっぱり気になるのはジム・オルークによるカバーでしょう。楽曲はsmily smile収録の「 Fall Breaks And Back To Winter (Spring Breaks And Back To Winter)」でSMiLEでは「Mrs. O'Leary's Cow」にその断片が利用されている楽曲ですがジムさんは全く別物の曲をカバーとして提供しています笑

ジムさんはビーチ・ボーイズのある楽曲の一部をループにしたミニマル・ミュージックを構想していると発言していましたが今のところ実現していません。提供された曲はBeach BoysのSmileとVan Dyke ParksのSong Cycleを掛け合わせたような雰囲気を持つ美しい作品となっていてこの時期のジムさんの充実ぶりがわかります。
エレピの音色やコーラスは武満徹の映画音楽やロバート・ワイアットのような雰囲気もあります。
ここで共演しているedith frostはシカゴを拠点に活動する女性SSWでジムさんのバカラックカバー「Something Big」のサビで聴くことができる印象的な女性コーラスの内の一人だったようです。



Fall Breaks And Back To Winter (Spring Breaks And Back To Winter) - Jim O'Rourke & Edith Frost






ブライアン・ウィルソンの朋友ゲイリー・アッシャーによるインストゥルメンタル作品から冒頭で演奏されているのが元の曲です。全く違いますね(笑)

Gary Usher - fall breaks and back to winter / good vibrations / heroes & villains


2013年3月10日日曜日

Jim O'rourke - Love Liza

名盤「Eureka」は完成までに5回作り直しており、「Insignificance」は制作時にそれまで録りだめていたデモを全て捨て去り作り直したとジム・オルークは発言しています。

海外のファンによるJIM O’ROURKE: FILMOGRAPHY(& DISCOGRAPHY)(http://tisue.net/orourke/)で2002年に公開された映画「Love Liza」のサントラ仕事が気になりました。

「Love Liza」はフィリップ・シーモア・ホフマン主演で日本未公開の映画(The Master公開記念でTSUTAYAあたりでレンタルできるようにしてほしい)。海外で観た方のblogによると妻に自殺された男がどんどんと堕ちていく話(しかもホフマン演じる主人公の役名がウィルソン)のよう。
フィリップ・シーモア・ホフマン、ブライアン・ウィルソンを彷彿とさせる役柄と役名、そしてその音楽をジム・オルークが担当しているのがおもしろい(見かけもなんとなく似てる)。

この劇中で使用される楽曲群がまるでうたもの時代を総括するかのような内容で驚きました。
上記うたもの三枚からの楽曲も使用されているのですが特に気になるのは「Eureka」のアウトテイクといってもいいような質の高いアルバム未収録の楽曲が劇中で使われている事です。

アンビエント的なペダルスティール、アコースティックギターのミニマルなフレーズ、弦、ビブラフォンが美しく絡む

"This is kickass!"


バカラックを彷彿とさせる爽やかな楽曲

"Time Off"




「カッコーの巣の上で」を思わせる
ペダルスティールと弦が美しいフレーズを奏でる軽快な楽曲

"Slidel"





サウンドトラックは未発売のため海外のファンが勝手に作成したサウンドトラックが出回っているのですが素晴らしい内容です。ここに挙げた楽曲の他にも4曲ほど劇中でアルバム未収録の楽曲が使用されています(いずれも美しいアメリカーナな楽曲)。

ジム・オルークが影響を公言しているburt bacharach「living together」やjack nitzsche「カッコーの巣の上で」のイメージが濃いがゆえにアルバムから外されたのかも知れない(アウトテイクだとするなら)質の高い楽曲達です。